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2013年1月18日金曜日

きつねが汽車に化ける話


204 : お[sage] : 投稿日:2003/02/24 01:03:00
 きつねが汽車に化ける話

松谷みよ子氏・瀬川拓男氏・辺見じゅん氏共著による「日本の民話-現代の民話」
には明治以降の鉄道に関する民話もいくつか掲載されている。
明治時代に語りつがれた民話の中で最も多いパターンは鉄道開業当時、初めて蒸気
機関車を目の当たりにした人々がとった見当はずれの行動、例えば機関車がもくも
くと煙を上げているのを見て、きっと暑かろうと同情して水をぶっかけたという類の話。
昔からキツネは美しい女に化けるというが、明治時代に入ると蒸気機関車に化けたこと
もあるようである。以下は同書からの引用。少しむかしまでは、諏訪山近くにもたんと
きつねがおったものよ。ひなたぼっこして遊んだり、クスンクスンようく眠っておった。
それがトンネル工事を始めてからいつの間にかどこかへ消えうせた。
この山陰線の諏訪山トンネルは、それは難工事であった。千妻道の峠の下に、古い池が
あって、これがいくら土を埋めてもふさがらん。
「ありゃ、きっと底なし池じゃ。池の主が汽車を通らせるのをいやがっとるのじゃろう」
工事人夫たちは薄気味悪がっておった。その上飯場で寝ていよると、もぞもぞと鼻つら
の先をなでられる。「こりゃ、池の主が化けて出てくるのかもしれん」 いうとった。
ところがある日、鼻つらをぺろっとなめられた人夫が、ハッと目をさますと、一匹の
きつねがちょこたりとすわっておる。
「よくもおれさまの鼻をなめたな。おまえのしわざだったか!」
腹をたてた人夫、大きな槌できつねをめった打ちにした。
ケーンと一声鳴くと、そのままきつねは死んでしもた。
その晩のことだったと。近くの山々から、ジャグエン、ジャグエンとせつなげなきつね
の啼き声が聞こえてきたそうな。



205 : お[sage] : 投稿日:2003/02/24 01:04:00
「おまえ、むごいことをしたな。きつねのたたりは恐ろしいというぞ」
仲間の人夫にいわれ、さすがに気の荒いこの男も青つらになった。
やがて、トンネル工事も終わり、山陰線が開通するようになった。
ところが、汽車が煙を吹いて諏訪山トンネルにさしかかると、遠くの方で赤い火がチラ
チラと燃える。やがて、その火が少しずつ近づいて来るので、機関士があわてて汽車を
止めると、火はふっと消えてしまう。
また、あるときは、向こうから汽車が正面衝突とばかりに、ゴーッと走って来る。
顔色を変えて急停車すると、いつの間にやら汽車は消えとった。
こうしたことが何回も続いたので、「きっと、殺されたきつねのたたりかもしれん」
人々は恐ろしがっていうた。
そこで、ある人が伏見の稲荷神社に参詣すると、死んだきつねのために
正一位の位をもらってきた。諏訪山トンネルの上にお稲荷さんのほこらを建て、
きつねの霊を慰めたという。
-松谷みよ子・瀬川拓男・辺見じゅん共著「日本の民話-現代の民話」角川文庫刊より引用-

キツネやタヌキが蒸気機関車に化けるという民話は、上の山陰本線以外 にも全国に例が多い。
播但線の生野-新井間では、最終列車が通過した後に、通るはずのない列車が通過して行くの
を何人もの村人が目撃した。ある時、時刻改正で最終列車の通過時刻が遅くなったところ、
線路には累々とタヌキの死体が横たわっていたという話。
かわいそうにタヌキは列車ダイヤの改正を知らなかったのであろう。



206 : お[sage] : 投稿日:2003/02/24 01:05:00
キツネやタヌキが化ける話は「危険に対する警告」を暗示しているという説がある。
つまり「危ないもの」「近づいてはならないもの」に化けるというのである。明治初期におい
ては煙や火を吐きながら轟音と共に走ってくる汽車の存在が、田舎の人々の眼には非常に
「危ないもの」として写っていたことは容易に頷ける。
そう考えれば、キツネやタヌキが化ける対象としては最もポピュラーな「美しい女」、これが
いかに危険であるかは長い人類の歴史上で多くの男達が体験してきた事実である。 

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